神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト

神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ エターナル・ホワイト (GA文庫)

グラナード家に仕えるスノウドロップは、誰よりも敬愛するプリムローズお嬢様第一主義者の「超」堅物メイド。彼女の日常はすべて、プリムローズのためだけにあった。そんなある日、年に一度開催される音楽コンクールでプリムローズが優勝し、精霊島にある音楽学院への入学が決まる。しかしそこは、招かれた者しか行くことが出来ない場所であった。お嬢様のため、なんとかして精霊島へ潜り込もうと画策するスノウの前に一人の精霊が現れた。彼の名はブランカ。伝説のコントラバスの化身だというこの精霊の登場で、スノウの運命は思いのしないものになってゆく!


赤と黒よりも何百年か昔のお話らしいです。黒はまだ積んだままですんで、比較は出来ないんですが、この作品はコメディの色も入った作品でした。
名家グラナード家に仕えるメイド・スノウドロップがお嬢様の曲の発表会で、楽器の心得もないのに神曲の演奏者として選ばれて、その後が一変してしまうお話。
主人公であるスノウドロップの性格がすがすがしくて、凄く好ましい。メイド服の上に帯剣している恰好もさることながら、努力家であり、思い込んだら一途で、お嬢様のためなら火の中水の中といったキャラクターが微笑ましくてとてもいいです。そんな彼女が、神曲の演奏者として選ばれた者しか向かうことが出来ない精霊島で、それまで押し付けられたという意識が強かった演奏者という立場への考えが変わっていく部分がとても素敵でした。
それを彼女に教えてくれた雫とブランカら精霊たちが人と共にあろうとする姿、雫のスノウを無条件に慕ってくれる姿、ブランカとの不器用ながらも出来ていくつながりなんかも素晴らしかった。ブランカがスノウに近づくものに対して嫉妬しているところなぞおかしくてたまりません。そんな精霊達の姿を見せられただけに、雫のあのシーンは正直ショックでした。
技巧としては自分のそばにいたスノウがとられてしまった嫉妬から、操られてしまったプリムローズを正気に戻した戦闘の部分をはじめ、文中に挿入された曲の数々もいい働きをしていると思います。
物語の展開は悪い方向に転がっていきましたが、出てくる人、そして精霊たちがほとんど善い人であるので、読後は淡い悲しみがあるもののさわやか。少し出てきたコーティカルテが、どういう存在であるかといった設定も明らかにされたこともあり、他のシリーズのこの先も楽しみです。