タザリア王国物語 影の皇子
- 作者: スズキヒサシ,あづみ冬留
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2006/07/10
- メディア: 文庫
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過去の作品が皆残念な終わり方になってしまっている方が、ロングスパンとなる戦記ものを書いて大丈夫なのか。スズキさんの新作です。
孤児の少年が瓜二つの姿をした皇子の影武者に選ばれ、王宮にて生活を送ることになります。孤児であるところから拾われた少年の王宮での人間関係や、周りで起きている水面下の争いがかなりリアルで面白かった。
そして避けて通れない、メーンというかむちゃくちゃ怖いのが皇子の姉リネア。これはツンデレって呼んでいいのですか? サドデレってやつですか。彼を独占したい気持ちでジグリットのよるべを端から叩き壊していき、当人にも虐待を加えていたぶる彼女はなんとも恐ろしい。何より怖いのが、どういうことをしたら一番ダメージを与えられるかを分かった上ですぐさまそれを行う行動力。そして、それを欠片も悪いことだとは思っていない(思っても無視してしまう)無邪気な歪み方ですね。このサディストっぷりはもっと具体的な描写があったら読めなくなっていたかもしれません。皇子の方は弱虫で引きこもりなんですが、もしリネアが跡継ぎだったらと思うとぞっとします。
ジグリットがうまくやっていこうとして行ったことが、裏目裏目にでて後々の火種を蒔いているみたいなのもイヤーな感じ。
色んなところでお披露目されているあたりお前本当に影武者的存在なのか、とか陰謀や戦闘の部分がちょっとお粗末過ぎるとか、最後の入れ替わりの部分があまりにもうまく行き過ぎるんじゃないかなど欠点もありますが、リネアにはなり代わったのがばれちゃったのが気になるし、そのほかにも張っている伏線が凄く気になります。ああ、彼の未来には不幸の伏線がいっぱい。