パラケルススの娘4 緋袴の巫女

肌寒い秋の月の明るい夜、見習い写真師櫻井忍は、金髪緑目の外国人と翼を羽ばたかせた美少女が宙へ飛んで行くのを見た。翌日、忍は夜の中国人街から聞こえてきた鼓弓の旋律にのった唄に導かれるように妖艶な美女「黄夫人」に吸い寄せられてしまう。そして忍の首筋に黄夫人の牙が突き立てられようとしたとき、一条の矢が窓を破って飛び込んできた!矢を放ったのは跡部多華と名乗る巫女装束の美少女。続いて現われたのは、忍が探していた金髪の外国人と、銀髪の少女だった。クリスティーナと遼太郎の祖母、たか女が初めて出会うきっかけとなった横浜の怪事件。この顛末は!?


パラケルスス4巻目。遼太郎の祖母の多華女とクリスティーナを主人公とした過去編です。あらすじの櫻井はさしづめ狂言回しといったところでしょうか。
長い時間生きているクリスティーナにつっかかっていく、多華女と睦月のコンビの言動が、当時の日本人の外国人に対する印象ははこんなものだったのかなと感じさせておかしかったです。そんな感じだったのが段々とうち解けていくのもよかった。
そんな主人の多華女と従者の睦月の関係が、彼にだけ弱いところを見せるように、主従というだけではないつながりといったものを感じさせられて良い関係なのだけれど、その悲劇的な終りを既に示されているのでとても複雑。また、クリスティーナに対して多華女が一巻で贈った言葉が、このような状況でこのような意味をもっていたとは思いもしませんでした。
クリスティーナという存在の登場をきっかけに、それまで自分を妖怪を退治する道具として捉えていた多華女が自分の存在について悩み、最後に出してしまった結論は、凛としていてけれどもとても哀しい。この後黄夫人と共に行動することになる睦月の心中は、無口で感情を表に出さないキャラクターなだけに、この時いかなるものだったのかが気になりました。
ラストの展開を始め本筋の方にも大きく影響を与えそうな本作。先見の予言など、方々に出てきた、遼太郎がどんな存在であるかいうことを示す言葉が気になるところです。本編の方もますます楽しみ。