青い花の伝説

青い花の伝説 (HJ文庫)

青い花の伝説 (HJ文庫)

鍛冶屋を営む「風追い者」のファンとスゥの兄妹は、聖アルージュ王国に滞在中、女騎士マデラインと出会う。マデラインから伝説の槍「トキギリ」に対抗する武具の製作を頼まれるファン。武具を作らないという信条を持つファンだったが、他の鍛冶屋にはない特殊な力を持つために国同士の戦いに関わることに…。最愛の妹を護るため生きるファンの過酷な運命を描く、ハートウォームファンタジー


伝説の聖人達の末裔で、その手に力を秘めた兄と足が悪いながらも兄とともに旅をする妹。流れの鍛冶屋をしながら漂泊者として暮らしていた彼らに、国同士の争いから問題が降り掛かってくるという流れ。
惚れたはれたな絡みの部分が少ないけれども、ヒロインらしきものもいますが、この作品でメインとなるのはファンとスゥの兄妹。あまり口に出すようなことはないけれども妹を大切にしていることが行動からよくわかる兄のファンと、兄のことが大好きで離れたくないスゥ。周りの視点から描かれるこの二人の姿が、二人の成長も合わせて微笑ましいというのがぴったり。それを支える鍛冶屋やお医者さんなど周りのキャラクターたちも好みでした。欲を言えばマデラインはもうちょっとヒロインらしい扱いをしてほしかったのですが。
欠点としては、ラストの部分への流れがあまりにも都合が良すぎる感じがしてしまうところと、ストーリー自体が駆け足で通り過ぎていったと感じられるところです。例えば、それまで心の奥に秘めていたことを、あまり相手を信頼しているようには見えないのにいきなり口に出すのはどうなのよと。この辺りについて説得力を持たせる展開を次の作品には期待したいところ。
少し前のライトノベル風ファンタジーの後継といった感じを受けました。