戦う司書と神の石剣

戦う司書と神の石剣 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と神の石剣 (スーパーダッシュ文庫)

武装司書のミレポックは、神溺教団との戦いの中で、「ラスコール=オセロ」なる人物が重要なカギを握っていると確信し、独自の調査に乗り出す。しかし、その人物を追うものには必ず死が待っているという。さらに剣使いの少女、アルメが現れ、彼女もラスコールを追っていることがわかり…『本』をめぐる壮大なファンタジー、全ての鍵を握る人物の正体がついに明かされる!?


ジョジョの荒木が帯を書いていたことに一番驚いたわけですが。ということで4巻目。
シリーズのこれまでは武装司書の長で、最強の存在であるミレポックに対して神溺教団の人間が戦いを挑むという構図だったのに対して、今作ではその姿をがらっと変えています。
神溺教団と関わりがあり、『本屋』をやっていると噂されるラスコール=オセロと過去に関わった人間たちの話と、それを今捜査している神溺教団の裏切り者のアルメと武装司書のミレポックの二人の少女が軸となって物語が進んでいきます。
過去と現在がめまぐるしく入れ替わる書き方は相変わらずですが、マンネリ化してきていた作風を吹き飛ばす、念入りにしかれた伏線と二重三重のどんでん返しがとても面白かった。
オセロに関する真実をつきとめようとする堅物の少女ミレポックと対になるような粗暴な少女アルメ、彼女たちのぶつかり合いと自身の弱い部分の自覚、その後に起こる奇妙な連帯感情の形成、そして最後の闘いによる終わりという一連の流れが過去を交えて感情面が丁寧に書かれていて面白い。そんな二人に対して、マットアラストや某氏がいかにして真実を隠し通すかという、その策謀がまた唸らされました。
そして作品が進むにつれてじわじわと感じられてくるのは、追うものは死んでしまうという「ラスコール=オセロ」という存在の不気味さ。都市伝説のような、いるようでもあり、いないようでもあるそんな存在を追うことの怖さを感じさせられます。またそれに関連して、これまでは武装司書の見方でしか描かれなかった神溺教団の行動原理、教義について教団側から書かれていたのが興味深かった。
神とはどういうものか、神溺教団が目指す楽園とはどういうところなのか?等々魅力的な謎がまだいっぱい提示されていて、この先も楽しみ。死んでいる人間も生きている人間も関係なく生かして、過去の登場人物が先の作品に絡み合っていく作者の構成力は凄いと思います。