ムシウタbug 4th. 夢並ぶ箱船
ムシウタbug 4th. 夢並ぶ箱船 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 岩井恭平,るろお
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/07/29
- メディア: 文庫
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短編集の過去編の方も4巻目。花城摩理とモルフォチョウがどのようにして今いるのかが分かってきます。それとともに亜梨子の立場が悪い方向に進んでいっている気がします。だんだんベールがはがれていってどうなってしまうんでしょう。
短編の中では「夢守る魔法使い」が出色。前の長編でも思ったけど、自分の理想に対して挫折を味わった人間がそれでも再び立ち上がる姿を描くのが本当に上手いです。ただ、ツカサが自分の思いに殉じてしまう姿は力強さを感じ、胸うたれるものがあるけれど、痛々しくてなんとも虚しい。彼女が魔法使いとして最初に目指していた、完全に正しい正義というものはなくて、誰かが泣くことになるとはいえ、これしかやり方がなかったのかと思わされます。
個人的に好きなのは「夢閉ざされる塔」。最後はともかく、日常の一幕といったああいうコミカルなのはたまりません。その中でハルキヨや霞王あたりのキャラクターの新たな一面が見られたのも面白かったけれど、キャラクターとしては「夢つなぐ温もり」での人間嫌いで鍛冶屋としての筋を通そうとする少女宗近が面白かった。頑固な職人で、本人は真面目にやっているのにどことなく滑稽に映ってしまうのがおかしかったです。
個々の話も面白かったですが、謎が分かりかけてきて、この日々の先に待っている終焉がとても気になってきました。