ムシウタbug 4th. 夢並ぶ箱船

ムシウタbug 4th. 夢並ぶ箱船 (角川スニーカー文庫)

ムシウタbug 4th. 夢並ぶ箱船 (角川スニーカー文庫)

親友・花城摩理の死後、一之黒亜梨子に取り憑いた銀色のモルフォチョウ。いったいなぜ?その答えを探す亜梨子の元に、花城摩理宛の差出人不明の招待状が届く。摩理の想いを探るため、監視役の薬屋大助と霞王ともに、豪華客船に乗り込む亜梨子たち。しかし煌めくシャンデリアの下で眼にした光景は、美しい双子の虫憑きのオークションだった―!?白銀の夢が闇色に染まる、それは最高で最悪のガール・ミーツ・ガール第4弾。


短編集の過去編の方も4巻目。花城摩理とモルフォチョウがどのようにして今いるのかが分かってきます。それとともに亜梨子の立場が悪い方向に進んでいっている気がします。だんだんベールがはがれていってどうなってしまうんでしょう。
短編の中では「夢守る魔法使い」が出色。前の長編でも思ったけど、自分の理想に対して挫折を味わった人間がそれでも再び立ち上がる姿を描くのが本当に上手いです。ただ、ツカサが自分の思いに殉じてしまう姿は力強さを感じ、胸うたれるものがあるけれど、痛々しくてなんとも虚しい。彼女が魔法使いとして最初に目指していた、完全に正しい正義というものはなくて、誰かが泣くことになるとはいえ、これしかやり方がなかったのかと思わされます。
個人的に好きなのは「夢閉ざされる塔」。最後はともかく、日常の一幕といったああいうコミカルなのはたまりません。その中でハルキヨや霞王あたりのキャラクターの新たな一面が見られたのも面白かったけれど、キャラクターとしては「夢つなぐ温もり」での人間嫌いで鍛冶屋としての筋を通そうとする少女宗近が面白かった。頑固な職人で、本人は真面目にやっているのにどことなく滑稽に映ってしまうのがおかしかったです。
個々の話も面白かったですが、謎が分かりかけてきて、この日々の先に待っている終焉がとても気になってきました。