月の娘1

月の娘 1 (HJ文庫)

月の娘 1 (HJ文庫)

いつものように校舎の屋上で昼寝を決め込んでいた一沙。その口に、ぬるりと何かが入り込んだ。「…うぅ、気持ちわるい」。気を取り直して部活に出ようとすると、一沙の頭の中に突然声が響く…。声の主は「イブキ」と名乗る得体の知れない人物。体を見つけてくれないと一沙から出られないと言われ、一沙は不承不承「イブキ」の抜け殻探しを始めるが…。


富士見ファンタジアの方で、タッグを組んでいた二人の作品。あちらのシリーズが大好きなので、渡辺さんが復活して本当に良かった。
パラレルワールドから、ふとしたことでやってきてしまった魔女の卵と、寺の息子の少年が織りなすストーリー。
展開としては非日常との邂逅ということになるんだろうけれど、作品全体から醸し出される雰囲気は日常そのもの。主人公の家に居候して、彼女が元の世界に戻るのに必要な魔導書の探索を行う中での日常の積み重ねが、その印象を強めています。それ故に終盤の展開は緊迫感がなく、少々盛り上がりに欠けるのも否めませんが、それもまた日常の一部ということなのでしょう。どこかで見たような風景に垂らした、実際にはない部分のバランスが違和感がなくてとても心地よい。
二人を始め登場する人たちも、どこか牧歌的で楽しい。主人公のお兄さんや園芸部の部長あたりは言動の細かな描写が行われているおかげで、様々な姿が見られてとても魅力的に見えます。ショートカットで元気のよい魔女の伊吹と何事にも動じない主人公の、伊吹に主人公がいいように振り回される関係も良いけれど、弱気でおとなしそうに見えて実は人懐っこい五十鈴さんと主人公の組み合わせが好きなので、この後も五十鈴さんを出してほしいところです。
続きもこんなほのぼのした感じでやってほしい。