あしたびより I

あしたびより I (HJ文庫)

あしたびより I (HJ文庫)

メイドのルシアが、幾度となく日記に書き綴った言葉。「友達なんていらない」。なぜなら、みんな明日には他人になってしまうから。彼女は真夜中になるたびその日の記憶を失う。日記を読み返し、変化のない日常に絶望することが彼女の人生だった。しかし、不器用な魔術師イルクと出会った日を境に、ルシアの日記は明るい明日を探し始める。不器用な少年と、希望を見失った少女が織りなす、儚い恋の物語。


人と付き合うことが苦手な天才少年が一日ごとに記憶を失っていく少女と出会う物語。
記憶を失っていくルシアを、イルクが精一杯その頭脳を使って助けようとするストーリーや、自分の感覚を失うことで魔術の力を手に入れることが出来るという設定は良かったと思うんです。ただ、あまりにも唐突すぎてぎこちなく感じる出会いから、主人公だから当然とはいえ、戦闘のあたりとかはどうも二人に上手くいくように出来ていると感じるところがあります。また、カディナの行動の意図がどうも分からない。あそこまで固執するんなら、なんで売り渡すようなことをしたんでしょう。そんなところが気にはなりました。
自分の記憶が感情を挟むことができないノートの形でしか残すことのできないルシアの苦悩と、イルクと出会ったことによる感情の揺れ動きがノートの描写なんかを通して丁寧に拾われて、昨日よりは今日を、今日よりは明日を向いていこうという前向きになったラストに繋がるのが良かっただけに、そのあたりが何とももったいない。放り出されて、使われていない設定をもうちょっと有効活用してほしかったな。
そういえば、喋っているのに対して割り込む文章を本の形で見たのは初めてかも。