ヒドラ HYDRA 2

この広い世界にひとり。それは筆舌に尽くしがたい恐怖だ。互いを失った瞬間に、世界から孤立する。―あの子をそんなふうに残していくわけにいかない。それだけが、全てだった。それが、全ての始まりだった。双子の妹ハナをアラタに預け、姿を消したウミ。それと同時に村を襲い始める奇病。血から血へと感染し、保菌者の意志で人々を操る病。そして、それを広めているのはウミ。だが、一体なんの為に?アラタの兄で村の神父見習いエイトは、ウミを狩るため、少女が潜伏している収容所へ村人と共に襲撃をかける。それを阻止しようとするアラタとハナだが―!アラタとエイト。ハナとウミ。二組の兄弟の行く先に待つものは…。ヒドラ―それは、永の別れを告げる白銀。


連続完納の二冊目にて完結編。自分たちがどんな存在で、刑務所においてどんなことをしでかしているかを知られてしまったウミは村との闘いに入ることになります。
前巻で感じた姉妹に対する怖さのようなものは消えて、過ぎ去った思い出を通して、人ではないものに生まれてしまった悲しみというものが感じられました。それとともにウミのハナへのアンビバレントな感情がどうして生まれてしまったのかが、よく分かります。もしかしたら、妹に対しての復讐心の様なものもあったのかも知れない。
どこへ行っても安住の地とすることが出来ない彼女たちとそれを石持て追うような人間。収容所が既に「化け物」に占拠されてからの、お互いの立場が1巻から逆転した構図に何とも人間の方も怖くなってしまいます。一連の追い込みと逃走劇は芽むしり仔撃ちなんか思い出してしまいました。
ただ、このようにして断ち切るようにして物語が終わってしまうのは、個人的にはどうも消化不良。前巻であそこまで割いたのだから、ウミとナカミチの関係とかももうちょっときちんと扱ってあげてほしかったなあ。アラタとハナはこれから、今までのウミとハナの様に暮らしていくんでしょうが、ラストで一人残されたエイトの言動が心を灼きます。すれ違ったまま終わってしまう二組の兄弟の伝わらない本心がなんともやるせない物語でした。余韻を残す終わり方だけど、どうにも読後感がしんどい。