神様が用意してくれた場所

神様が用意してくれた場所 (GA文庫)

神様が用意してくれた場所 (GA文庫)

香絵が雑用バイトをしている日比野探偵事務所に、ある日舞い込んだ依頼は「あるはずのない道に消えた夫を捜して欲しい」という不思議なものだった。子どもの頃から幾度となく小さな“不思議なこと”を体験してきていた香絵は、そんな自分の経験が何かに役立つかもしれないと思い、いつもはかかわらない調査へと同行する。人が消えたというその道は、なんの変哲もないただのT字路に見えた。しかし、道に霧がたちこめてきたその時、なんとあるはずのない道が現れ、そこは十字路に変わっていたのだった!


ぶたぶたの作者がおくるちょっと不思議な物語。矢崎さんで検索掛けたら、ぶたぶたがこんなに出てたことにびっくり。
地方から上京してきた、人に比べると不思議な出来事が身近に起こる少女・香絵。そんな彼女が関わる物語は、ぶたぶたシリーズに比べると棘が在って、若干ほろ苦いようなお話もありますが、根底に流れる暖かい雰囲気は変わらないなあと感じさせられます。連作短編の形をとっているのですが、各々が持ち込んでくる不思議は全く違う形なので、一話一話の全く別の話として楽しむことが出来ました。
総じてみると、やっぱり3話目の「すれちがいの気配」が好き。ずっと気になっていた一度すれ違っただけの男女、その相手を捜してほしいとの依頼。偶然が重なり再会を果たすのですが、そうであっても運命の人に落ち着くわけではない。それでも、別れてもいつか会いたいと思えばまた会うことが出来るという二人の思いが爽やかなお話でした。元々自分の周りに起こることを嫌がっていて萎縮していた香絵が、4話目で母校の先生の過去にまつわる不思議の探索を行うように、展開とともに成長していくのも心地よかった。
それまでの伏線を回収したラストの表題作も幻想的で、上手く出来ていて心をホッとさせてくれます。佳作といった印象の作品でした。
犬のグミがとっても可愛かったので(それだけではなく物語の中で明かされていない部分もあるし)、続編も見たいなあ。