親不孝通りディテクティブ

親不孝通りディテクティブ (講談社文庫)

タクシー強盗と、港の火事、そしてスーパーの警報騒ぎ、同時に起こった事件の意外な関連とは…。中洲の屋台でバーを営む鴨志田鉄樹と、結婚相談所の調査員・根岸球太。腐れ縁の通称「鴨ネギコンビ」が、どういうわけか、物騒な事件に関わっていく。博多を舞台に大暴れ!ハードボイルド・ストーリー。

北森さんの連作短編が文庫落ちしました。
沈着冷静で、基本的にクールなテッキと、お調子者な上に自己中で女好き、だけれどもどことなく憎めないキュータのコンビが最高。脇を固める暴力団とつながりがある悪徳刑事や、ライブハウスのオーナーで貫禄のあるジャズ歌手の歌姫、二人の恩師でキュータが勤める結婚相談所のオーナーのおふくろさんらのキャラクター達も独特で、屋台にやってきては行われる彼らの会話がとても魅力的でした。また、こんな屋台、ましてや中州なんぞ行ったことがないので、その雰囲気を感じることが出来て、面白かった。
それぞれの事件については、何の関係もない事件が結びついて、一つの結末へと収束していくというパターンは大方一緒ですが、狂言回し的なキュータの存在もあって明るく進んでいく推理の部分から一転、導かれる結論は切ない。二人が傍観者の立場ではなく、事件に深く関わることになり、決定的な結末が訪れるラストの「センチメンタル・ドライバー」は無論のこと、表題作の「親不孝通りディテクティブ」が良かったです。立派な人格を持ったホームレスのおじさんが放火をしたということで捕まって、顔見知りの二人は彼はやっていないはずだと確信して調査に乗り出すお話なのですが、彼が人を思い、身命を賭してまでその人を庇おうとした姿がとても切ない。
よんどころなき結末により、こんなかたちで終わってしまっているのが残念。テッキに関しては訳ありの部分が山積みなので、続きを読みたいところです。