花守

花守 (GA文庫)

花守 (GA文庫)

「守るよ。僕が、これから先ずっと、子規を守る」少年が幼い頃に出会った少女は、鬼を自らに降ろして怪異を滅ぼす役目「花主」の継承者たることを宿命づけられていた。人には巨大すぎる力をその身に受け入れることで、短い命があらかじめ決定している少女・花橘子規。幼馴染みである彼女を見守り続けるため、蔵内春獄は花主を守護する役目「花守」になることを迷わず選んだ。町の人々を守るために人知れず続く少年と少女の戦いの日々は、しかし避けようのない終わりへと、否応なしに近づいていく。新進気鋭の作者が贈る、切なくて温かい、真摯なラブストーリー。


放っておくと妖怪となってしまうタマを祓うために、鬼をその身におろされ、代償として寿命を縮められた少女、霊を見ることが出来て彼女を守ることを役目としている少年。そんな二人の成長を描いた物語。
冒頭の入りのところがもうちょっと説明が欲しかったかなというところはあれど、いい作品だと思います。ただ、日常の描写が上手いだけに一巻で完結という形ではなく、もうちょっと腰を据えて終盤に到るまでの部分を読みたかった。まあ、新人さんだから難しいだろうとは思いますけど。
キャラクターとしては主人公達のクラスメイトの祇園が良かった。とてもいい人としか形容の仕方がないんですが、この物語において役割面だけではなく彼女の存在は大きいと思います。終盤にちょっと豹変してしまいますが、それも愛あればのこと。彼女だけじゃなくて、彼女の幼馴染みの主税や彼の妹メイらが作り出す「日常」の空気が良かったので、返す返すももうちょっと描写があったらなあと残念なことしきり。タマ祓いとそんな日常の中で、好意を抱いていた子規との間が縮まっていく主人公が抱えた葛藤の描写も上手かったと思います。
個人的には人に叱咤されながらも自分を殺していた、終盤の主人公の態度に歯痒さを覚えてしまって(周りも残酷だとは思うけれど)、決心に至るまで正直辛いところがあったけれど、これはやっぱりハッピーエンドなんでしょう。特に子規にとって。切なく、温もりのあるラストでした。