花守
- 作者: 越後屋鉄舟,文倉十
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/08/10
- メディア: 文庫
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放っておくと妖怪となってしまうタマを祓うために、鬼をその身におろされ、代償として寿命を縮められた少女、霊を見ることが出来て彼女を守ることを役目としている少年。そんな二人の成長を描いた物語。
冒頭の入りのところがもうちょっと説明が欲しかったかなというところはあれど、いい作品だと思います。ただ、日常の描写が上手いだけに一巻で完結という形ではなく、もうちょっと腰を据えて終盤に到るまでの部分を読みたかった。まあ、新人さんだから難しいだろうとは思いますけど。
キャラクターとしては主人公達のクラスメイトの祇園が良かった。とてもいい人としか形容の仕方がないんですが、この物語において役割面だけではなく彼女の存在は大きいと思います。終盤にちょっと豹変してしまいますが、それも愛あればのこと。彼女だけじゃなくて、彼女の幼馴染みの主税や彼の妹メイらが作り出す「日常」の空気が良かったので、返す返すももうちょっと描写があったらなあと残念なことしきり。タマ祓いとそんな日常の中で、好意を抱いていた子規との間が縮まっていく主人公が抱えた葛藤の描写も上手かったと思います。
個人的には人に叱咤されながらも自分を殺していた、終盤の主人公の態度に歯痒さを覚えてしまって(周りも残酷だとは思うけれど)、決心に至るまで正直辛いところがあったけれど、これはやっぱりハッピーエンドなんでしょう。特に子規にとって。切なく、温もりのあるラストでした。