骨王 (1)

骨王 (1)アンダーテイカーズ (角川スニーカー文庫)

骨王 (1)アンダーテイカーズ (角川スニーカー文庫)

憧れの従姉を殺された明良海翔は、現場に残された血文字“BONEK”だけを手がかりに犯人を追う。だが、それを境に彼を取り巻く日常は崩壊した。街では「アキラカイトの喉を切り裂け!」と連呼するヒット曲『BORNKING』が流れ、それに従う少女たちが異能の力を振るって海翔の命を狙う。なぜ自分だけが狙われるのか?―混乱する海翔は、この異常事態の連鎖から脱出できるのか。


スニーカーの新人さん。感想が延び延びになっているので一念発起して(そんな大層なもんじゃない)書く次第。えーと、スニーカーの新作はどの作品も続編前提の作りですが、どうなんでしょこれ。
主人公の海翔は従姉の死んだ現場に遭遇し、その後に人間の意識が乗っ取られてしまったミミックという生き物に付けねらわれることになります。人体に傷を付けることで簡単に脳細胞を体に潜んだウイルスに乗っ取らせることができるあたりはホラーがかったサスペンスの風味でもあり、人間対ミミックという対立構造には伝奇小説のような趣もあります。様々な要素を詰め込んだが故に、終盤にかけての書き込みが足らなくて、ちょっと消化不良の面はありました。過去の事件がもとで冷徹になってしまったヒロインの心が解かれていくシーンはエピローグとして持ってくるのもいいけれど、もうちょっとスペースを割いてあげてほしかった。
海翔はお年頃な少年で、それが良きにせよ、悪しきにせよ押し付けられたことに対して反抗したくなる中学生の心理が描かれていたと思います。ただ、父親に対して反発するところなど、誰も自分を分からないという様な自己中気味の青臭さが強かったのがちょっときついところはありました。頭が良くて冷静という役どころの従兄弟の車いすの少年・葉平も、肝心なところでアレな行動をとってしまうなど、全般的にキャラクターがいまいち魅力的じゃなかったなあ。
作品の暗めな世界観の設定や、人間だと思っていた人が得体の知れないものに変わったり、いつ自分も変わってしまうかも知れない怖さというものは魅力的に映ったんで、キャラクターのこれからに期待といったところでしょうか。どんな風に海翔が成長するのか、楽しみでもあり、怖くもあります。