極北からの声―フルメタル・パニック!サイドアームズ〈2〉
極北からの声―フルメタル・パニック!サイドアームズ〈2〉 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 賀東招二,四季童子
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 文庫
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本編を補完するようなフルメタの外伝的作品集。カリーニンと宗介の出会いとその後を描いた「極北からの声」、潜水艦乗りとしてのマデューカスの人生とテッサの一家の過去の関わりを描いた「トゥアハー・デ・ダナン号の誕生」、宗介とかなめたちの騒がしい日常の一こまの「大食いのコムラード」の三編を収録しています。
主要な軸となる人物の過去を、彼らにとって大きな存在である他者の視点から描くことによって、また新たな魅力を切り取っています。何が言いたいかというと、この二つの短編において主役を務めるカリーニンとマデューカスの二人がとても渋いということ。外伝という形で別にして出したのは成功だと思います。
「極北からの声」では、カリーニンがソ連軍の士官から、北極海での宗介の救出と敵味方という形での残酷な再会を通して、信じていた正義を捨てるまでを描いた作品。この作品はカリーニンの一人称で進むんですが、過ぎ去った過去を悔やみつつも表に現さないようにしている戦士の姿が、逆にその痛みを如実に感じさせます。宗介の悲劇的なそれまでは本編の方でたびたび示されていましたが、カリーニンにとっても悲劇だったんだろうな。
過去編ということで、話の流れにそって第三の核の事件を始めとした、現実の世界とは異なったフルメタの世界の歴史の進み方が見られるのも面白かったです。
マデューカスの方は潜水艦乗りとして一本芯の通った生き方が静かに熱い。テッサの父親との、いかにも潜水艦乗りらしい水の下での交流も魅せてくれます。また。ウィスパードとしての能力に覚醒してしまって悲劇を招くことになった、テッサの背負った思いが垣間見えるのが印象的でした。
最後の短編は通常の方の短編集に収録されるような作品で、ここにあるのは場違いな気がしますが、そんな日常の姿がそれでも今の状況を思うと切なくなります。