多重心世界 シンフォニックハーツ 上.独声者の少年
多重心世界 シンフォニックハーツ 上.独声者の少年 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 永森悠哉,曽我部修司,高山瑞季
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/08/31
- メディア: 文庫
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人が最大五つまでの人格を持っている世界で、ただ一つしか人格を持たず差別され続ける少年のお話。人々の頭にはチップが入っていてコンピューターと接続されているという、まるで近未来のような雰囲気の世界です。
人格がそれぞれ別の生活を営み、人格が多い人間ほど能力があるように扱われる世界、という舞台設定は新鮮で面白かったです。前半の有形無形の差別が続く中で、差別される主人公が実は星府と抵抗軍双方にとって重要な人物で…という展開はベタだけれども、心をくすぐるものでした。
その中で、人格が一つしかない独声者の、人格同士の折り合いがつかず一部の人格が豹変してしまった異常多声者の、社会から疎外され敵視される様の描写が克明で、とても印象的です。カノンを守ろうとするソロをはじめ、それに対して必死で抵抗しようとする人々の姿が熱い。それが故にこれからというところでのあのシーンはきついなあ。
そして、ラストで物語の核にからむ謎が明らかにされて、それまでの世界に対する印象が一変。どう転ぶのか分かりませんが俄然次巻が楽しみになってきました。いや、あの展開は驚いた。
人格それぞれに名前がついているので、名前を見てどんなキャラクターだったか思い出せないこともしばしば。設定の都合上仕方ないと思うのですが、この点はちょっとつらいです。