地球人のお荷物

地球人のお荷物―ホーカ・シリーズ (ハヤカワ文庫SF)

地球人のお荷物―ホーカ・シリーズ (ハヤカワ文庫SF)

星間調査部隊少尉アレックスが不時着したのは、太陽系から500光年離れた惑星トーカ。そこに住んでいたのはテディ・ベアそっくりのホーカ人だった。天真爛漫で想像力豊かなホーカ人、アレックスと出会って地球の文化に夢中になり、西部の男ドン・ジョヴァンニシャーロック・ホームズなどなど、あらゆるものをまねしはじめたからさあ大変!てんやわんやの大騒動の結末やいかに?


1972年に出版された作品の復刊。なれどまったく古さを感じさせないコメディです。
様々な事情が重なり、テディベアそっくりの外見をしたホーカ人と深いかかわりを持つことになったアレグザンダー・ジョーンズ。紆余曲折の末、彼はトーカの星の全権大使になるのですが、そんな彼がホーカ人に振り回される笑いと涙の日々が短編の形で綴られています。
このホーカ人と言うのが、虚構のものでも簡単に感化されて、現実と同じように丸々取り入れて演じることで自分たちの文化を構成してしまう民族。ジョーンズが星に墜落した第一話においては西部劇を取り入れて、ウェスタンスタイルでカウボーイとして生活していて、順にオペラのドンファン、宇宙パトロール、ホームズの世界、海賊、フランス外人部隊と、ころころとその舞台が変わっていきます。そのたんびに騒ぎに巻き込まれているジョーンズからしたらいい迷惑でしょうが、このドタバタがとにかく面白い。ドタバタ劇ということで誰が喋っているのか分からず若干読みにくい部分もありますが、段々と引き込ませる魅力あふれる作品だと思います。
また、一見野蛮なことを演じながらも、人(熊?)を殺したり傷つけたりするようなことはしないホーカ人の性格も大きな魅力。そののほほんとしながらあらぬ方向にジョーンズを引っ張っていってしまう姿に心が和んでしまいます。馬鹿なことやっているように見えて、実は物事に注ぎ込む情熱とその頭は並外れてますしね。
宇宙秘密パトロールのドラマに感化されたホーカ人たちによって、武装をはじめた星の船をジョーンズが制圧しにむかう羽目になってしまう「進め!宇宙パトロール」が一押し。他には海賊の首領にジョーンズが祭り上げられる「ヨー・ホー・ホーカ」、ワトスン役として働くことになる「パスカヴィル家の宇宙犬」も好きです。収録されていない短編も読みたいけど、どこか出してくれないかなあ。