モンスターズ・イン・パラダイス (1)

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

人間とモンスター——《神話的人類》の共存する大都会、アイオニア連邦ブルームフィールド市。田舎から出てきたばかりの新米捜査官ジョエルは、着任早々《神話的人類》専門の部署に配属される。実は《神話的人類》恐怖症のジョエル。 だが、コンビを組むことになったカートは、意地悪でひねくれ者で、しかも吸血鬼だった——…!!


縞田さんの新作。神話の中に出てくるような生物との共存を謳っているブルームフィールド市。新米の捜査官として、神話的人類たちと接していくことになるジョエルの物語。真っ正直で素直な青年ジョエルと本当は思いやりがあるんだけれども、厭味とそっけない態度でそれを覆い隠しているカートのコンビの成長がいい。カートを頑ななまでに覆っている殻のなかの本質を、ジョエルが子犬みたいといわれるような純朴さで追いかけていくうちに見破っていくのが良かったです。彼はこの先どこまでカートの内面に踏み込むことが出来るのか注目。
彼ら二人の(血を飲まないのが)辛いんだったら僕の血を吸ってください、いや君のは飲まないというやり取りに、あちらの香りをそこはかとなく感じてしまいますが、そんな部分はそこまで強くなかったので助かりました。
また、楽園のようなタイトルとは裏腹に物語の中での神話的人類への人間による扱いは、蔑みか恐怖の対象であることが多いのがとても重い。神話的人類に対してのテロの捜査に関わる中で、彼らが憎めないキャラクターであることが分かるにつれて、一般的な人間並みの考えを持っているジョエル君の考えが変わっていくのが印象的でした。
神話的人類の種類としてはハーピースフィンクス、セントール、そしてヴァンパイアあたりが出てくるんですが、人間とはちょっと違った部分を持つ彼らの細かな描写も面白かった。中でもセントールの芸術家兄妹の、ずぼらで芸術家気質の画家の兄としっかり者の妹の映画女優のキャラクターが笑えて良かったです。
この先神を名乗る男が、この一連の事件にどう絡んでくるのか、続きが楽しみです。