絞首人の一ダース

絞首人の一ダース (論創海外ミステリ)

絞首人の一ダース (論創海外ミステリ)

EQMMコンテストで第二席を獲得した、著者の短編代表作「タルタヴァルに行った男」、自殺した妹の復讐を誓う青年を描き、読後に深い感慨を誘う「優しい修道士」、最後の一行で見事に謎が解ける「悪の顔」など、名手アリグザンダーの短編を一三編収録。人間の本質を突く視線、多彩なアイデア、見事な構成、余韻の残る結末。スタンリー・エリンが絶賛した珠玉の短編群をここに刊行。


借り物。借りてる期間長くなってしまって本当にすみません。
作品の趣向としてはクライムノベルと呼ぶのが一番適当でしょうか、ミステリとは呼びがたい作品を含め様々な方向性の作品が詰まっていてジャンルわけしづらいところがあります。作品自体の雰囲気はタイトルが示唆してるように、暗鬱としたものが多め。作品自体はかなり昔のものなので、結末が分かってしまう短編もありますが、ラストに向かって収束させていく構成の手腕そして、上手いところでスパッときる余韻のある終わらせ方を存分に味わうことができました。
優しい修道士」や「蛇どもがやってくる」あたりの、薄々感じる残酷な結末へ向かって突っ走ってしまう様は、彼らが善良な人間であるだけに、手加減しない扱い方が苛烈に後味悪く感じられるとともに、ブラックユーモアのような趣も醸し出しています。黒人差別のリンチを描いた「そして三日目に」や雪山で遭難してしまう「愛に不可能はない」あたりは極致。そしてそんな短編たちが積み重なってあるだけに、ラストの一編が際立って見えます。
謎の方としては前後の短編のこともあり、設定に完全に騙されてしまった「空気にひそむ何か」の切れ味が凄い。「悪の顔」のパズラーテイストな終わり方も上手かったけれど、個人的にはこちらが上手に思えました。
好きな短編としてはラストの一言にぞくぞくしてしまう「蛇どもがやってくる」、前出の「空気にひそむ何か」人を殺していて、人に死んだと認識されないとその場から成仏することができない、地獄のような場所での殺人者達の姿を描いた「向こうのやつら」あたり。
このジャンルの作品がそこまで好きではないのですが、面白かった。文章は翻訳ものだけど本当に読みやすかったです。