探偵は今夜も憂鬱

探偵は今夜も憂鬱 (創元推理文庫)

探偵は今夜も憂鬱 (創元推理文庫)

美女に振りまわされつつ、事件調査も生活の糧にしているフリーライターの柚木草平。エステ・クラブの美人オーナーからは義妹に関する調査、芸能プロダクションの社長からは失踪した女優の捜索、雑貨店の美人オーナーからは死んだはずの夫から送られてきた手紙の調査の依頼が舞い込むが…。柚木を憂鬱に、そしてやる気にさせる美女からの三つの依頼。


中篇三本からなる短編集。
中篇という短い尺ながら、相も変わらず柚木さんは年上、年下関係なく女性にフラグを立てたりして、流されっぱなし。どの依頼を受けても気がついたら美女に行き着くというのがファンタジーですな。これまでと違ってお金に動かされる描写が明確に出てきているのが新鮮っちゃ、新鮮です。結末は様々ですが、哀愁を感じる終幕の何とはないやるせなさを打ち消す、歯の浮くようなやりとりはそのまま。それぞれの作品に登場する人たちの、相手に対しての独占欲の発露が招く結末というのが印象的でした。
登場キャラクターとしてはこれまでの作品で出てきていたインパクト十分の娘・加奈子ちゃんが出てこないのが残念です。代わりにといってはなんですが、恋人と行きつけのバーのママさんにいじめられていますが、美人に弱い柚木さんに自分たちで美人の依頼人を紹介しておいて、とはいたぶっているみたいじゃないか。彼女たちが考えた通りに美女に惹かれて動いてしまう柚木さんも柚木さんですがね。
タイトルは全部「〜の憂鬱」と統一しなくても、改題前のでもよかった気がするなあ。