翼は碧空を翔けて (1)

最近面白くない話ばかりでうんざりしていた、小国ロートリンゲンの王女アンジェラは、ある日王宮に不時着した巨大な飛行船にすっかり魅せられてしまう。大空へ、初めての外の世界へと、アンジェラは今、飛び立った!


三浦さんのお久しぶりな新刊。2年ぶりですか、嬉しいなあ。舞台は王政が瓦解しかかった世界、科学が発展しつつある時代。じゃじゃ馬お姫様の成長物語とラブストーリーです。
国を飛び出した元気いっぱいの世間知らずなお姫様のアンジェラ。勝ち気な彼女と、彼女が理に合わないことをすると叱りつける飛行船の船長のセシルの組み合わせがとても良い。ちょっと依怙地な部分はありますが、彼女が自分勝手なだけではなく、他人のことを気遣える人間であること、彼が辛辣ではあるものの、皮肉を飛ばす厳しいだけの堅物でなく筋の通った人間であることが、へたすれば悪くなりかねない雰囲気を爽やかに仕上げています。最初は王族であるが故にプライドが高く、世間知らずだった彼女の成長を描いた今巻。喧嘩ばかりになってしまった二人の関係がお互いの国が対立状態に向かう中でどう変化するのかが楽しみです。セシルの叔母さんの家での一幕が本当に楽しかった。
アンジェラに対しての、セシルの従者ランディの恋心も素朴で応援したくなります。どうも報われない匂いがぷんぷんしますが、彼のセシルへの尊敬の思いとアンジェラへの思慕がとてもよく伺えるだけに、二人が対立したときのおろおろする姿が微笑ましい。
世紀のラブストーリー、次はどんな形になるのでしょうか。