鋼殻のレギオスⅥ レッド・ノクターン

嫌な予感がした。「隊長は、どうしました?」いずれわかることだし、誰かが聞かなければならなかった。「ニーナは現在、行方不明だ」冷たく、つらい現実を、銀髪の生徒会長が告げる。その瞬間、レイフォンは心の中でコトリ…となにかの音がしたのを感じた。その間にも、夥しい数の汚染獣がツェルニに向かって、愚直なまでの一直線で向かってくる。一方、グレンダンを発ったリーリンは途中で立ち寄った学園都市・マイアスで奇妙な事件に巻き込まれる。そこで彼女が出会ったのは―。


単巻で見ると少々消化不良の印象強し。多分短編の方で補われているのであろう状況説明が省かれたまま物語に入るので(特にリーリン側の)物語に入り込みにくいのと、それが最後にきっちりとけりがついたとは言いにくいからだと思います。でも仕方ありません、ツェルニとマイアスによる都市対抗戦となる第二部の開幕だそうですから、おいおい説明があるとは思います。
ということで、レイフォンはニーナがいなくなったことに衝撃を受け、彼女の信念を成り代わって守るためにひたすら汚染獣との戦いに臨み、リーリンはマイアスで奇妙な事件と驚きの人に出くわすという筋。大分今まで見えなかった話が明かされてきていて、特に電子精霊と廃貴族の関係が明確に分かったのが大きかったです。まあ、それと同時にハテナが付く部分もまた出たのですが。
強力な力を持ちながらもその力をもてあまし、自分に強力な目的意識を与えてくれる他者に依存してしまうレイフォンは、パンプキンシザーズの伍長を彷彿とさせます。前々から薄々そんな描写があったのですが、ここまで支えが消えて、精神的に負い目に感じて弱ってしまうとは思いませんでした。彼を近しい存在と思う故に、フォローするフェリと、人間としての立場から叱咤して意識を変えさせようとするカリアンが好対照で面白かったです。表面的には取り繕ったもののラストでニーナが帰ってきて、彼女は依存させる気満々なところで彼がどういった選択をするのかが楽しみ。
ニーナとリーリンの接近で一波乱あるのかと思いましたが、それとは別にリーリンが精神的に強くなっているところが、電子精霊を巡る騒ぎの中で浮き彫りになったのが印象的。今のレイフォンに会うとどうなるのでしょうか。そしてレイフォンを巡る女の戦いは、この先の都市対抗戦の中でかな。二人がレイフォンの思い出を語るのに、実名を出さないあたりが本当に相手がレイフォンについて語っているのか気づいていないのか勘ぐってしまいそうです。ところで出番ももらえなかったメイシェンは…。
ということで、伏線いっぱいという感じのお話。トリックスターという感じのサヴァリスの動きが怪しげです。そんな中、来月出る単行本でどのあたりまでこの世界の成り立ちを説明するのか気になるところ。