学園カゲキ!

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

「いいか、野郎ども!目立て!ここでは目立ったやつの勝ちだ!」----日本一のタレント養成高校・歌劇学園入学式。壇上の生徒会長のお言葉に、早くも入学を激しく後悔するのは、成り上がり精神ゼロの新入生・会澤拓海。お昼の学食風景は毎日全国生中継だし、体育館裏。女子のケンカを止めに入ったらドラマの撮影だし、その監督は担任の女教師・有坂古都乃先生24歳着やせタイプ!だし、ヒロイン役のクラスメイト・橘九月とは、なぜか近所のスーパーでしょっちゅうはち合わせしちゃうし……


ガガガ文庫の新人さん。役者として有名になることを目指した若者が入学する学校で、そんなことを知らずに入学してしまった会澤拓海の仲間達と織りなす学園生活を描いています。
役者になったり有名になったりすることに興味がない会澤君ですが、役者を目指す個性的な先輩やクラスメイト達との日常は、日常と役者としての非日常が上手い具合に混ざり合ってて、コミカルで楽しい。そして『スプリント・ガール』というドラマのなかでヒロインを演じているボーイッシュなクラスメイトの橘九月と、劇の撮影中に間違って乱入してしまってからずっと反発しあっていたのが、憎まれ口をたたき合うようになり、互いを知る中で段々と惹かれ合っていくのは、何ともむずがゆい。ちょっとした不安からくる心の揺れ動きや、最後のシーンも含めて青春ものの王道ですね。この過程だけで、十分楽しめます。
中盤からはがらっと毛色が変わって、ここから物語は急転、違う側面を見せてきます。


以下ネタバレ。
少し前の洋画に、自分の人生はずっとカメラで撮影されていて、自分が大切だと思っていた人たちもその為に用意された役者だったということを知ってしまう青年の物語があったけれど、それを思い出しました。ただそれだけではなく、中盤からの展開がメタのような構造になっていて、裏切られた主役に半ば感情移入して読んでいたのが、「学園カゲキ!」というドラマを見ている一視聴者という立場を意識させられるのには驚きました。どこまでが真実でどこまでが作られているのか、とてもケレン味のある、それでいて物語としては真っ直ぐな作品です。登場人物達が魅力的なので、構成的に一発ものなのは惜しいなあ。