うちのメイドは不定形

うちのメイドは不定形 (スマッシュ文庫)

うちのメイドは不定形 (スマッシュ文庫)

「あらあら、私たちとしたことがなんてはしたない。申し訳ありません、一億五千五百万年ぶりのご奉仕が嬉しくて、〈生成〉が終わる前に飛び出してきてしまいました……ちょっとだけ、お待ちくださいな」

「申し遅れました。私たちの名前は、人間さんの発声器官に合わせた発音で〈テケリ・リ・テケ・テケ・リ・ル・リ・テケリ・テケ・リ・ラ・ル・ラ・テケリ・テケ・テケリ・リ・ル・ラ・リ・テケリ・リ〉と申します。ご主人様のお世話をするようにと南極から私たちを送り出されたあなたのお父様は、私たちのことを〈テケリさん〉と呼んでくださいました。どうかご主人様もそのようにお呼びくださいませ」


クトゥルフ神話をモチーフに萌やしてしまえ!という形のどっかでもお見かけしたような作品。ただ、基本人間スタイルのあちらに比べて、こっちの方はタイトル通り冒頭からかっ飛ばしてます。クール便で届いた不定形にお湯を掛けるとメイドになって登場して、スライムみたいにふくれて家中のお掃除をすませたり、複数の個体に分裂したり融合するあたり。

ただ、意外とネタ度は低め。極地で長い間眠りについていたテケリさんが、今の人間世界に慣れてきちんとご主人様との関係を築いていくまでを、二人の日常にスポットを絞って背景を比較的抑えめに描写しているのでコミカルなドタバタ劇としてよく出来ていました。そして、分裂してそれぞれが別々の自我をもったミニテケリさんがとても可愛らしく、お約束なボケをかますものの、万能でご主人様に一途なテケリさんのキャラクター自体も可愛い。家に欲しいですね。
また、ただ原典からキャラクターを拝借してくるだけではなく、敵に襲撃される物語の後半で、彼女?の過去と今抱えている思いとしてきちんと作中に取り込んでいるのが良かったです。終盤の挿絵のための妄想は流れ的にいらなかったんではとは思いましたが。
きれいに纏まっているけど、主人公や、敵だったあさひも含めてキャラクターが気に入ったので続編を希望する次第。